ミュージックソムリエ協会では、「こんな時に聴きたい音楽!」ということで、日常のヒトコマで、ふっと聴きたい音楽を選曲しました。選曲はすべて、ミュージックソムリエによるもの。

秋から冬の風物詩となった、コンビニおでん。実は、一番売れるのは9月から10月の秋口だと言われているそうです。夜になるとグッと冷え込むようになった今日この頃。おでんの誘惑をさらに強くする曲を選びました。

1.Passage山崎まさよし


朝晩の空気がややひんやりしてきた初秋、コンビニのおでんコーナーに心惹かれる季節になりました。

山崎まさよしの9枚目のシングルであるこの曲は、199910月にリリースされました。まさにこれからの時期にピッタリです!

仕事を終え、クタクタになりながら歩く帰り道、途中にあるいつものコンビニの灯りにホッとして、つい寄り道。温かいおでんの湯気を見つめていると、店内から流れてくるのがこの曲だったら、ちょっと泣けるな・・・と思います。柔らかく心に沁み入る歌声、優しいアコギの音色、決して押し付けがましく無いそっと応援してくれる歌詞・・・。まるで庶民のミカタのような、とても身近に感じられる曲です。

ちょっぴり物悲しくなるこの季節に、一瞬気持ちをほっこりさせてくれる小さな幸せ、コンビニおでんと共にこの曲をぜひ

(選曲・文 高原千紘) 


2. 「夜学のロマンス」/町あかり


おでん。昭和の代表格の食べ物と言っても過言ではない存在です。そんな食べ物に似合うのは、現代に生きる昭和娘の音楽ではないでしょうか。町あかりは、1991年生まれのシンガーソングライター。作詞作曲からプロデュースまで、自分でやってしまう才媛です。

「夜学のロマンス」の軽妙なエレクトロ音が、スーパーやコンビニで流れていそうな、妙にポップなBGMを思い出させます。でも、よく歌詞を聴いてみると、毒々しい・・・。「先輩に食べられる」と言ったニュアンスの歌詞を聴いて苦笑いしつつ、私は先輩よりも「おでんが食べたい」と、大根とちくわぶをレジで注文してしまいそうです。

(選曲・文/石井由紀子) 


3.「東京」くるり


家族団らんには、家庭のお鍋にあったかいおでんが用意されるのですが、一人暮らしにはそうもいきません。頬に触れる風が少し冷たく感じたら、人肌恋しい季節。ひとりの寂しさがちょっぴり身にしみます。せめてコンビニのおでんで身も心もあったまって冬に備えたい。

くるりの1998年のメジャーデビュー曲「東京」は、ひとり故郷から東京に出てきた若者の寂しさを歌っています。昔から東京へ出てきた若者の歌はいろいろありますが、この歌はまさに平成の時代。

コンビニでおでんを売るようになってから、屋台のおでん屋を見かけなくなりました。コンビニおでんは平成の時代を感じます。

ちなみに関西ではおでんのことを関東煮と言います。

(選曲・文/阪口マサコ)


4.かげぼうし/いきものがかり


秋になると私はいきものがかりの音楽を聴きたくなります。このグループには色々な楽曲がありますが、日本調の切ないメロディーに吉岡聖恵の温かいボーカルが、夕焼けや紅葉が彩るオレンジの色とすごくマッチしているような気がしてならないんですよね。特にシングルではないアルバムのみの収録曲だと、そういったタイプの楽曲が必ず入っているような印象があります。

今回紹介するのは「かげぼうし」。200812月に発売されたアルバム『My song Your song』の5曲目に収録されている曲です。この曲は一つ一つの光景と人間模様を実に丁寧に描いたナンバー。曲中で繰り広げられる、おだやかで温かい雰囲気は、ちょっとばかり住宅が並ぶ、ごく日常の穏やかなシチュエーションにピッタリ合うように思いますね。その風景の中にコンビニがあって、そこでおでんを頬張る姿は実に自然なシチュエーションといえるでしょう。

(選曲・文/Kersee 


5. Home Sweet HomeYUKI


夕方から夜にかけて、ぐっと気温が低くなるこの季節。
YUKIの優しくも、どこか儚い歌声を聴きながら帰路を急ぐと、少し切ない気持ちになります。夜道にふっと浮かび上がるように、優しい光を放つコンビニ。レジ横で湯気をたてるおでんは、切ない気持ちを優しく包んでくれることでしょう。

Home Sweet Home」は、2005年に発売された、YUKI3rdアルバム『JOY』のラストを飾る曲です。YUKIの歌声に耳を傾けつつ、出汁の利いた厚揚げにかぶりつくと、心がほっとしそうです。じんわりとした温かさが、心に沁み渡ることでしょう。

(選曲・文/石井由紀子)

 

 

 

編集:吉川さやか

出典:ミュージックソムリエ協会staff blog

ミュージックソムリエ養成講座

鈴木健士(NPO法人ミュージックソムリエ協会 理事長 シンコーミュージック刊『音楽業界 金のバイブル』にてインタビュー掲載