選曲のエキスパート“ミュージックソムリエ”があなたに贈る、日常のワンシーンでふと聴きたくなる

あんな曲やこんな曲――今回はどうしようもない熱帯夜に思わず聴きたくなる一曲です。

  

Yeah! Yeah! Yeah!」/androp

●寝苦しい夜に欲しいのは、この爽やかさ

少しでも気分を紛らわせたい寝苦しい時に、欲しいのは暑さを払う爽やかさや涼しさです。

ピッタリの曲がありました。昨年の三ツ矢サイダーCMで起用されたandropYeah! Yeah! Yeah!」。突き抜けるような爽快感を感じるメロディーと、ボーカル・内澤崇仁の声。いやぁ、良いですね。「透明なおいしさ」が採用しただけあって、ストレートな爽やかさを最も味わえる楽曲ではないでしょうか。

(選曲・文:Kersee


 

 

「目覚めよと呼ぶ声ありBWV645」/J. S. バッハ

●それはひらめきの目覚めかもしれない?

タイトルの“目覚め”は真意が少し違いますが、それでも、眠れないのは決して苦しいだけでなく、脳がひらめきを起こす前兆かも。名曲はふとしたひらめきから生まれたという例も、少なくないそうです。

勉強が進まず頭が重たくなっている受験生も、仕事のアイデアが浮かばず困り果てているあなたも、この曲を聴いて頭をリフレッシュしてみませんか?

(選曲・文/堀川将史)


 

 

After Hours」/THE VELVET UNDERGROUND

●あせらないで、夜はまだまだ続きます。

今回ご紹介するのは伝説的なロック・グループ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドによる「After Hours」(1969年発表の『IIIThe Velvet Undergroundより)。仕事終わりに群衆が酒場で楽しむのを眺めながらも、それに加わることが出来ない女性の歌。彼女は脇の方で一人ポツンと佇み、永遠に終わらない夜の世界を望んでいます。

寝苦しい夜に、明日のこと(仕事)を考えるから余計にイライラしてしまう。ふと起きてこの曲を聴けば、気だるい呟きと素朴なアコギが時の流れを緩やかにしてくれることでしょう。永遠の夜へ逃避。

(選曲・文/旧一呉太良)


  

歌劇『ポーギーとベス』より「サマータイム」/キャスリーン・バトル

●真夏の夜に大人が聴く、極上の子守歌

ガーシュウィン作曲のオペラアリアです。アメリカ南部の黒人街が舞台の作品の中、母親が赤ん坊をあやしながら歌うブルース調の子守歌。これまで様々なジャンルのミュージシャンに歌われ、現在ではジャズのスタンダードナンバーとして知られています。

歌唱はキャスリーン・バトル。1986年夏、日本のウイスキーのCMに出演し反響を呼んだソプラノ歌手です。やり場のない悲しみを抱えつつ子どもの成長を願う内容を、大地を優しく包み込むような歌声で聴かせてくれます。頭蓋骨内を満たすJazzyなゆらぎが心地よく、穏やかに眠気を誘ってくれることでしょう。

(選曲・文/山本陽子)


 

「泳ぐ」/渡部沙智子

●眠れないあなたに、睡眠薬ソングを処方

「あぁ、寝苦しい! ムキー!」……そんな時は、実際に眠れぬ日々に苦しんだ女性歌手の歌を聴くのはいかがでしょう。人間とは残酷な生き物。自分がつらくても、さらに苦しくつらい誰かを見知ると、気がハレてしまったりします。

5日間も眠れず、いよいよ幻覚が見え始め、お医者にかかったら睡眠薬をもらった、というこの歌。ミュージカルのような素敵なメロディーの上に、 睡眠とスイミングをかけて「夜を泳ぐ」と歌い上げる、なんともユーモラスな1曲です。水の中を優雅に泳いでいるイメージが、暑さも和らげてくれることでしょう。

(選曲・文/今井義明)
 

 

「嵐が丘」/ケイト・ブッシュ

●いっそ「から騒ぎ」な曲を聴きたい

夏の夜に現れる妖精に誘われているような、不思議な雰囲気を醸し出すケイト・ブッシュの歌声。大人気だった恋愛トークバラエティ「恋のから騒ぎ」のオープニングテーマ曲としてご存じの方も多いかと思います。イントロのピアノが奏でるメロディーと、ケイト・ブッシュのハイトーン。小説『嵐が丘』をベースにした、実にロマンチックな曲です。

収録されたアルバム『天使と悪魔』は1978年発表。当時19歳だった彼女は58歳になった現在も、出身国イギリスを中心に音楽活動を続けています。

(選曲・文/石井由紀子)


 

さて、お気に召した選曲はございましたか。

ぜひこれを機にCDやレコードなどの音源でも、各曲をお楽しみいただければ幸いです。

それでは、熱中症にはくれぐれもお気を付けくださいね。

 

編集:吉川さやか

参考:ミュージックソムリエ養成講座