ミュージックソムリエ協会blog

シチュエーション別の音楽や、ミュージックソムリエ協会の日々の活動状況などをお伝えします!

2016年12月

選曲のエキスパート“ミュージックソムリエ”があなたに贈る、日常のワンシーンでふと聴きたくなるあんな曲やこんな曲――今回は、本日29日(木)950からのフジテレビ『ワタシが一番知ってます』にて「紅白歌合戦知識王」として優勝した、日本最強の紅白ウォッチャーであるミュージックソムリエ・カーシーさんより、今年末の放送において注目すべき7曲をお伝えします。

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「心かさねて」/市川由紀乃

●苦節24年超、ついに紅白初出場!

苦節云年で紅白初出場……という演歌歌手は過去にもいますが、長い活動休止から復帰して紅白の舞台にまで辿り着いた演歌歌手は、市川由紀乃さんくらいかもしれません。作曲家・市川昭介門下生としてデビューしたのが1993年、燃え尽き症候群で2002年から4年半の休止期間がありましたが、復帰して実績を重ねてここまでやってきました。

記念すべき初出場の曲として歌唱する「心かさねて」は、今年を代表するヒット演歌。女ならではの愛を描いた見事な歌詞は、「越冬つばめ」を手がけた石原信一の作です。説得力のある歌声で、聴かせるステージになりそうです。

  

「九頭竜川」/五木ひろし

●紅白歌合戦史上初、40曲目の歌唱

30回以上の紅白出場となると往年のヒット曲を披露する歌手もいますが、五木ひろしさんだけは例外。出身地・福井を流れる九頭竜川を歌う今回の曲で、番組で披露した歌は40曲。ちなみに通算出場回数がより多い北島三郎さんが30曲、森進一さんが33曲。五木さんが、いかに稀有な例であるかよく分かります。

最近の紅白は、特に中堅どころ以上になると演歌はほとんど往年の名曲です。これはこれでファンとしては嬉しいのですが、五木さんほどのベテラン歌手が毎年新曲を歌うのも紅白ウォッチャーとしては楽しみな見どころです。

“二度とない人生だから”に代表されるスケールの大きい歌詞、68歳と思えない声量。演歌に馴染みのない若い世代にもぜひ、「五木ひろしの凄さ」を味わって欲しいです。


 

「サイレントマジョリティー」/欅坂46

●今年数少ない10代がメインのユニット

今年の初出場者は紅白合わせて10組いますが、ほとんどが昨年以前に大きな実績があったり、別分野での活躍があったり……本当にフレッシュなのは彼女たちくらいではないでしょうか。少し前だと中学生や高校生が紅白に出場することも珍しくなかったですが、ここ最近は少なくなりましたね。

「サイレントマジョリティー」は今年4月に大ヒットした彼女たちのデビュー曲。センターの平手友梨奈さんはまだ15歳という若さです。同年代の心情を代弁するかのような大人顔負けの歌唱力と、フレッシュなパフォーマンスに滲み出る芯の強さ。この2つを体感できるステージは、初出場者のまさに醍醐味、ぜひ注目してください。


  

「ハリケーン・リリ、ボストン・マリ」/AAA

●ライブで定番の人気曲、満を持して紅白初披露

AAAがライブで必ず披露するこの曲は、紅白初出場を果たした2010年より前となる、2006年のナンバー。当時は後藤友香里も含めた8人組(現在は7人)。ファン歴が長い人ほど、今回の選曲には感慨深いものがあるのではないでしょうか。

楽曲提供は真島昌利。ブルーハーツ→ハイロウズ→クロマニヨンズのギタリストとしてお馴染みです。彼の提供曲が紅白の舞台に響き渡るのは今回が初、つまり「紅白初マーシー」でもあるのです。

AAAのライブではタオル回しがこの曲の定番。私が生で彼らを見た、昨年の新潟「音楽と髭達」という音楽フェスでは、砲台を使ってタオルを打ち上げる演出もありました。

紅白は7回目の出場になる彼らですが、これまで以上に楽しいステージが今回は期待できそうです。


 

「恋」/星野源

●今年を代表するヒット曲に、演出も無限の可能性

星野源さんは2度目の出場です。今回の楽曲については、わざわざここで書く必要もないほどの国民的ヒット曲になりました。というわけで注目したいのは演出。ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』からは、いわゆる“恋ダンス”が期待されます。既にゲスト審査員で新垣結衣さんの出演も決定していますし、どんなメンバーが、どれくらいの規模で、何人参加するのかと、期待がふくらんでしまいます。

また、『真田丸』絡みの演出も期待できます。さらにNHKではコント番組『LIFE!』にも出演しています。

内村光良さんや塚地武雅さん、ムロツヨシさんらの乱入もあるかもしれません。

大ヒット曲だと演出の期待も大きくなりますが、これだけ想像できる例は滅多にありません。あるいは今回の紅白歌合戦で、最大のハイライトと言っても過言ではないでしょう。
 

 

「青春の瞬き」/椎名林檎

●今年の林檎は“青春”の味

実はここ3年連続で、私が驚かされているのは椎名林檎さんのステージです。一昨年の「NIPPON」で見せた眼の力。前回の「短い祭」で見せたステージの世界観。いずれも圧倒的な存在感でした。今年のリオ五輪閉会式も大喝采を浴びましたが、これもひとえに彼女が関わっていたからではないでしょうか。

「青春の瞬き」は元々栗山千明さんに提供した曲で、自身が歌うバージョンは一昨年のアルバム『逆輸入~港湾局~』収録されたものが初。最終回の一つ前となる先日19日放送『SMAP×SMAP』で、初めて聴いた方もいるかもしれませんね。


 

「花束を君に」/宇多田ヒカル

●“人間活動”から復帰、初の紅白へ

NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』主題歌として発表された「花束を君に」。同じ日に配信リリースされた「真夏の通り雨」。そしてアルバム『Fantôme』。久々に聴いた宇多田さんの歌声は、とても優しくて抱擁力に満ちています。

彼女がついに紅白歌合戦初出場。発表された曲順は、紅組のトリを務める石川さゆりさん「天城越え」の前。紅白ウォッチャーでなくとも、非常に楽しみな瞬間です。


  

●おわりに

43組のステージが披露され、両組トリも含めると今年の紅白出場歌手は46組。

話題のピコ太郎さんはどう登場するのか、SMAPの勇姿の歴史はこのまま埋もれてしまうのか、大ヒットした大河「真田丸」の堺雅人さんや来年の「おんな城主直虎」の柴咲コウさんはどんな演出で現れるのか――お話は尽きませんが、これらはまた別の機会に。

 

それでは日本の年の瀬の風物詩、67回目を迎える国民的歌番組を、皆様もぜひ楽しんでください。

(選曲・文/カーシー

 


さて、お気に召した選曲はございましたか。

ぜひ今年の紅白歌合戦をホールで、あるいは生放送で、せめて録画でお楽しみいただき、CDやレコードなどの音源でも、各出場者の楽曲をお楽しみいただければ幸いです。

 

それでは、よいお年を♪

※ミュージックソムリエ・ベーシック講座第11期受講生募集中

 

【ページ末クレジット】

編集:吉川さやか

参考:ミュージックソムリエ養成講座

 

「本物の音楽」が持つ“繋がり”や“物語”を毎日コラム配信サイト“TAP the POP“にて月曜日(不定期)、ミュージック・ソムリエによるコラムをお送りしています。ぜひご覧ください!

心と体を熱くする【魅惑のソウル・ヴォーカル②】テディ・ペンダーグラス(後編)〜Joyー喜びと愛と幸せの歌
(前編はこちらから http://www.tapthepop.net/sommelier/54809

1982年、最もセクシーな男の称号を欲しいままにしていた人気絶頂期のテディ・ペンダーグラスを悲劇が襲った。
3月18日、テディ自身が運転していた愛車のロールスロイスがガードレールに激突、その衝撃で反対側車線を横切り樹木に激突して車は大破、テディは一命はとりとめたものの、脊髄を損傷して四肢不随となる重傷を負ってしまうのだった。

早速マスコミは「次のテディ・ペンダーグラスになるのは誰?」などと容赦無い記事を書きたてた。

「俺はまだ死んでいないんだ!」

有名なテディ・ペンダーグラスはもう落ちぶれてしまったという世間のイメージと、誰にも理解されない孤独や苦しみと戦いながら、テディは病院で数ヶ月間、懸命のリハビリを行なった。

そしてPIRを離れてエレクトラ/アサイラム・レコードと契約し、1984年にアルバム『Love Language』(邦題『愛の贈りもの』)で復帰する。当時まだデビュー前だったホイットニー・ヒューストンを迎えてデュエットした収録曲「Hold Me」が、ビルボード・チャートの50位以内となる、まずまずのヒットとなった。

しかし全体的にスローバラードを中心としたこのアルバムでは、心なしかテディの声に戸惑いのようなものが感じられるのだ。事故前とは変わってしまった彼自身の体でどこまで歌えるのか、手探りのようなレコーディングだったのではないだろうかと察せられる。
そんなテディ・ペンダーグラスが事故後初めてファンの前に姿を見せたのが、1985年のライヴ・エイドだった。アシュフォード&シンプソンと彼らの楽曲「Reach Out And Touch (Somebody’s Hand) 」を大観衆の前で歌ったことで、テディは自信を取り戻すのだった。

(ライヴ・エイド’85からの映像)


そしてその3年後、アルバム『Joy』が発売される。タイトル曲「Joy」は、ほぼ10年ぶりとなるR&Bチャート1位の大ヒットを記録する。ここでのテディの歌唱にはもう戸惑いなどは感じられない。かつての鋭いパワーで攻める歌唱ではなくなったものの、ふくよかで優しく包容力のあるテディ・ペンダーグラスの歌がここにはある。
アルバムには、テディによってこのように記されている。
The songs of Joy, Love and Happiness recorded for this album are the expression of the joy, love and happiness that has been brought into my life.

このアルバムに録音された喜びと愛と幸せの歌は、僕の人生にもたらされた喜びと愛と幸せの表現なんだ。

そして、アルバムは彼の心の支えとなってくれた当時の妻カレンに捧げられている。



2002年の2月14日には、事故後初となるフル・コンサートをロサンゼルスのウィルターン劇場で行った。「The Power of Love」と名付けられたこのコンサートはライヴ録音され、アルバム『From Teddy With Love』として、またDVDとしても発売された。
車椅子の上で上半身でリズムをとって歌うテディ・ペンダーグラスには、もはや戸惑いも苦しみもなく、ただ歌うことへの喜びにあふれている。
ライブの後テディはこのように語っていたという。

「あの夜は会場に愛が漂っていた。僕はそれにずいぶんと元気づけられたよ」

(ライブよりオープニング曲「Joy」)

その後「ザ・テディ・ペンダーグラス・アライアンス」が設立され、テディと同じく事故によって半身不随となった人たちへの支援が今でも行われている。
しかし2010年1月13日に、テディ・ペンダーグラスは59歳という若さでこの世を去った。
遡るが、テディがソロになって2作目の1978年に発売された大ヒットアルバム『Life Is a Song Worth Singing』(邦題『人生は歌』)のタイトル曲「Life Is a Song Worth Singing」に歌われている歌詞を最後に味わってみたい。
テディ・ペンダーグラスの人生に重ねて。

人生って歌ってみる価値はあるよ
君も歌ってごらんよ
鍵は君がその手に握っているじゃないか
使ってごらん!
人生が思い通りにならないからって
恨むんじゃない
それに立ち向かうんだ!
君の人生で何ができるか
決められるのは、君だけなんだぜ
もうダメだと思うなんて、バカだよ
自分の人生を、うまくあやつることさ
その気になりゃ 人生ってやつは
歌になるくらい値打ちのあるもの
歌ってごらんよ!




参考文献:waxpoetics japan 09号、ソウル・サーチン・ブログ 吉岡正晴著、アルバムCD『Joy』林剛著ライナーノーツより

選曲のエキスパート“ミュージックソムリエ”があなたに贈る、日常のワンシーンでふと聴きたくなるあんな曲やこんな曲――今回は、養成講座を今年卒業したばかりの新しいミュージックソムリエたちから、「これをおススメしたかった!」というこだわりの選曲をお贈りします。

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Blackstar」/Amanda Palmer & Jherek Bischoff (Featuring Anna Calvi)

●ダークで美しい、デヴィッド・ボウイのトリビュート

デヴィッド・ボウイの遺作となったアルバム「★(ブラックスター)」。多くの人が曲の意味を解読するのに躍起となる中で、アマンダ・パーマーは、ストリング・カルテットを使って音楽的な構造を掘り起こすことに集中しました。

不穏な暗闇を進む導入部から一転、光が差し込み視界が開がる展開部の息を飲む美しさ、そして明と暗が交錯しながら混沌と結末に向かうダークネス。

オリジナルの音楽的な革新性を取り払い、ダークで美しいメロディをクローズアップした、注目すべきトリビュートです。

(選曲・文/藤原学)


Blackstar
David Bowie
Sony
2016-01-08



Jesus Is The Answer/ Jessy Dixon Singers

●聖夜に聴きたいオーガニックな応援歌(ゴスペル)

年の瀬に色々なことが一段落して、ふと「なんか疲れたな」という時。巷に溢れる応援ソングがトゥーマッチに感じられる時。そんな時にお勧めしたいのがこの曲です。

童謡のように素朴なメロディが、スッと耳に入って思わず口ずさみたくなります。さらには圧倒的な声の力で、ぎゅっと抱きしめられ、ぐいぐい押し上げられていやでも気持ちが昂ります。「ああ、人の声ってこんなに気持ちいいんだ」。

シンプルな編成で化合物がないので、健康にもよさそうです。

(選曲・文/藤原学)

Jesus Is the Answer
Jesus Is the Answer
Fuel 2000
2013-03-26

 

 




Feed Back」/Caravan

●土臭い町の朝焼けに聞こえる音。物語はここから…。

全国を旅しながらライブを重ねるネオフォークシンガー。2004年、インディーズから発売されたデビューアルバムの1曲目としてライブでも人気である。メロウなアコーステックギターのリズムと切なげな歌い方は、子供のころイメージしたアメリカの田舎町を想起させ、激しいロックを聞いた時の高揚感とは違う胸の高鳴りを覚える。それは「西へ行く道の彼方に沈む太陽」という歌いだしで、その世界に引き込まれるからだ。

自分を見失いそうになるほど目まぐるしい時間の中で、彼の歌はじんわりと体に染み入り、“何か始めよう”という気持ちにさせる。もし人生に迷ったときは、ぜひこの曲を聴いてほしい。

(選曲・文/齊藤靖英)

 

RAW LIFE MUSIC
Caravan
アーロンフィールド
2004-04-21

 

Bring On The Night」/THE POLICE

●白いレゲエおやじは活火山

スティングの今秋リリースのアルバムが、“13年ぶりのロックアルバム”として注目、65歳にしてますますアグレッシブである。

ジャズやクラシック、映画音楽に寄っていた90年代以降から溜まり続けたマグマが爆発したかのようだ。

マグマの基は、ポリスにある。ロックとレゲエの要素を併せ持ったサウンドは当時、斬新なアプローチでホワイトレゲエと呼ばれた。ブイブイ系のベースと裏ビートに刻まれたギターに、衝撃を覚えた。さて、13年前のロックアルバムは『セイクレッド・ラヴ』。今回のアルバムはそれよりもロックだ。

才能豊かな白いレゲエおやじは定期的にロックアルバムで爆発する、まさに活火山のようなアーティストである。

(選曲・文/齊藤靖英)
 

白いレガッタ
ポリス
USMジャパン
2011-11-09

 

One Day At A Time」/Joe Walsh

11日を大切に

「この曲は、親友のウォッカ無しにどうやって生きるかって曲だよ。もう18年も前にオサラバしたけどね。」 Eaglesのギタリストであるジョー・ウォルシュは、世界的な大成功を収めた裏側で、長い間アルコール依存症に苦しんで来た。まるで「暴走列車」の様な生活を続けて来たが、同じ様に走ってきた仲間は次々とこの世から居なくなってしまった。「こんなに長く生きるつもりはなかった!」と神様に嘆くも、「11日を大切に生きよう」とする大ロックスターの姿に感動。

2012年作『Analog Man』収録。

(選曲・文/コニシマコト)
 

Analog Man
Joe Walsh
Fantasy
2012-06-05

 

40 oz. Dream 」/Good Charlotte

2000年代西海岸パンクの意地

「ラジオをつけるとひどく混乱した。ラッパーは歌っているし、ロッカーはDJしている」。

2000年代US西海岸パンクシーンを牽引していたGood Charlotteが今年、音楽シーンを痛烈に批判した楽曲を発表した。現状を「40オンスの悪夢」に例え、2013年当時の楽しさは何処へ行ってしまったのかと訴える。また、的確な批判内容を上手くリズムとメロディーに落とし込み、しっかり韻を踏める音楽的センスが素晴らしい。「今でもパーティーのやり方を知っている」彼らの姿に胸が熱くなった30歳目前の元キッズは、私だけだろうか。

2016年作 『Youth Authority』収録

(選曲・文/コニシマコト)


Youth Authority
Good Charlotte
Mddn Llc
2016-07-15




さて、お気に召した選曲はございましたか。

ぜひこれを機にCDやレコードなどの音源でも、楽曲をお楽しみいただければ幸いです。

また、「ミュージックソムリエってなに?」と気になった方は、まずはぜひ資料をお取り寄せください。

>11期募集中!http://ms-kouza.jp/index.html

 

それでは、また次号で♪


編集:吉川さやか

参考:ミュージックソムリエ養成講座

 

選曲のエキスパートミュージックソムリエがあなたに贈る、日常の1コマでふと聴きたくなるあんな曲やこんな曲――

先月7日に逝去したレナード・コーエンを「実はよく知らない」という方におすすめの5曲をご紹介したところ(第106回)、思わぬたくさんの反響・好評が寄せられましたので、今回は、その続編をお贈りします。

  

1.Suzanne」/LEONARD COHEN

●美しい夢想が寂しい、片思いの歌

パリで出会った女性をモデルに書いた曲。憧れの女性との精神的な繋がり――“For you've touched her perfect body with your mind”を描いています。途中、イエスが出てくるなど天国の様に穏やかでありながら、聴いた後とても寂しい気持ちになる曲です。レナード・コーエンが初めて書いた曲であり、1966年にジュディ・コリンズが歌ったヴァージョンがオリジナル。これがレナード・コーエン(当時32歳)のレコード・デビューへと繋がりました。

1967年作『Songs of Leonard Cohen』収録。

 

Songs of Leonard Cohen
Leonard Cohen
Sony Legacy
2007-04-24

  

2.Bird on the Wire」/LEONARD COHEN

●次は上手くやる、だから許してほしい

自分の身勝手な振る舞いで迷惑を掛けてきたことを懺悔して、許しを乞う歌。「電線の上の鳥のように、自分なりの自由を求めてきた」。ストリングス・アレンジは、望んだ自由に届かず、行き詰まった男の侘しい気持ちに寄り添うようにセンチメンタルです。しかしながら、うちひしがれた彼から放たれる、最後の歌声「Free」の力強さたるや。自由を見失わず、追い続けているレナード・コーエンのしぶとさが印象的な曲です。

1969年作『Songs from a Room』収録。
「Bird on the Wire」

 

Songs From a Room
Leonard Cohen
Sony Legacy
2007-04-24

  

3. Famous Blue Raincoat」/LEONARD COHEN

●三角関係の終わり

男二人女一人による三角関係を題材とした曲。かつて妻を奪った親友へ向けて、綴った手紙が題材となっています。妻は戻ってきたがわだかまりは解けず、もはや愛情は戻らない。それでも恨み言を言わず親友を懐かしむのですが、やはり絶望している様子が漏れ伝わり、居たたまれない気持ちになるラブソングです。ララララララ……という欝々としたコーラスが印象的。1987年、ジェニファー・ウォーンズ(後述)がこの曲をタイトルとした彼のカバー・アルバムを発表。レナード・コーエン再評価へと繋がります。

1971年作『Songs of Love and Hate』収録。 
 

Songs of Love and Hate
Leonard Cohen
Sony Music
2009-07-14



4.Smokey Life」/LEONARD COHEN

44歳のレナード・コーエン、穏やかに人生を振り返る

彼はヘヴィ・スモーカーでした。この曲は、放っておけば飛んで消えてしまうような、まさにたばこの煙のような人生を送ってきた、と自己を振り返る歌です。1972年、かねてより自身の低い歌声に劣等感を抱いていたレナード・コーエンは、バンド・メンバーとして女性コーラスを二人加入させます。そのうちの一人が、先述のジェニファー・ウォーンズ、ここではデュエットで参加しています。深い孤独を感じさせるレナード・コーエンの歌声を、ジェニファーの優しい歌声とエレピが包み込んでいます。

1979年作『Recent Songs』収録。
Smokey Life
 

Recent Songs
Leonard Cohen
Colum
1993-11-01

 

5.Hallelujah」/LEONARD COHEN

●神への敬服と反抗

愛する女性との出会いと別れ。それぞれの場面で発せられるハレルヤに込められた感情を歌っています。1994年にジェフ・バックリィがカバーしたことで、多くの日本人にも知られている曲です。

大仰でキラキラとしたバンド・サウンドは賛否が分かれるところですが、レナード・コーエンの歌唱は唯一無二。呟かれる低い歌声には、深いしわが刻まれているかのようです。

1984年作『Various Positions』収録。

 

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なし(廃盤)

 

前回の選曲にはたくさんのうれしい反響をいただき、ありがとうございます。再びレナード・コーエンをご紹介できる機会に感謝します。彼の楽曲を年代順に追っていると、声質の変遷がよく分かります。女性のこと、宗教のこと、自分の声のこと、様々なことに悩みながら、もがいて生きたレナード・コーエン。一生を掛けて残された彼の歌で、これからも多くの人が慰められ、励まされることでしょう。

(選曲・文 ジェシー芝池)

 

編集:吉川さやか

参考:ミュージックソムリエ養成講座

 

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心と体を熱くする【魅惑のソウル・ヴォーカル②】
テディ・ペンダーグラス(前編)~最もセクシーと言われた男
http://www.tapthepop.net/sommelier/54809

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